スクリーニング画面に、見たことのない社名が出てきた瞬間のことを覚えてるか。
配当利回り4%以上、PER15倍以下、東証プライム。条件を入れて検索ボタンを押す。ずらっと並んだリストの中に、聞いたこともない4文字があった。
都築電気。
「つづき……でんき?」と、口に出して読んでみる。検索する。「富士通系のシステムインテグレーター」と出てくる。分かったような気がして、次の瞬間には何も分かっていないことに気づく。
四季報を開いた。数字は並んでいる。売上1,000億円台、営業利益80億円台、過去最高益。ふむ。……で、これは良いのか? 悪いのか? 比べる基準を持っていないから、数字を見ても何も判断できない。
そこで手が止まる。ブラウザのタブは開きっぱなし。買うでもなく、閉じるでもなく。
その状態、痛いほどわかる。俺も20代の頃、まったく同じ場所に立っていたからだ。
ただし俺は、そこで止まらなかった。止まればよかったのに、買った。「なんか良さそうだから」という、今思えば理由ですらない理由で。
結果を言う。半年で300万円が消えた。
朝、通勤電車の中でスマホを開いた。証券口座の残高が、前の週より2桁少ない数字で表示されていた。何度か画面を下に引っ張って更新した。数字は変わらなかった。次の駅で人がどっと乗ってきて、俺はスマホを持ったまま押されて、窓ガラスに肩を押しつけられていた。あの朝の窓ガラスの冷たさだけは、15年経った今でも覚えている。
そのあと3年かけて、俺は「よく分からない会社に、よく分からないまま金を入れる」という行為の代償を、給料で分割払いした。
だからこの記事では、都築電気について調べれば分かることを、全部調べて、全部書く。
- 都築電気はどんな会社で、何で稼いでいるのか
- 富士通との関係は、結局のところ何なのか(ここが一番の誤解ポイントだ)
- この会社の強みはどこにあるのか
- 誰も書きたがらない弱み・リスクは何か
- 今の株価は、指標で見て高いのか安いのか
- 今後・将来性を、中期経営計画の数字から読み解く
- 新NISAで持つなら、どう向き合えばいいのか
先に宣言しておく。俺はこの記事で「買え」とも「やめとけ」とも言わない。
そのかわり、判断に必要な材料は隠さず全部出す。強みも書くし、弱みはもっと厚く書く。IRページには絶対に載らないことも書く。読み終わったとき、あなたが自分の言葉でこの会社を説明できて、自分で決められる状態になっていればそれでいい。
もうひとつ先に言っておく。都築電気は、富士通の子会社ではない。筆頭株主は、まったく別の会社だ。
この一点だけでも知っておく価値がある。なぜそれが投資判断に効いてくるのか——順番に話していこう。
本記事に掲載している株価・指標・業績数値は、すべて2026年7月20日執筆時点で公開情報から確認できたものです。株価や指標は日々変動します。最新かつ正確な情報は、必ず都築電気の公式IRサイトおよび証券会社の提供情報でご確認ください。また本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
都築電気ってどんな会社?──1932年創業、ICTの「設計から運用まで」を請け負う会社
まずは正体をはっきりさせよう。ここが分からないまま指標の話をしても、砂の上に家を建てるようなもんだ。
名古屋の「都築商店」から90年以上──沿革をざっくり3行で
結論から言うと、都築電気は今年で創業94年目に入る老舗だ。IT企業と聞いて想像する、渋谷のオフィスでMacBookを開いてる会社とは、そもそも出自が違う。
始まりは1932年。名古屋の「都築商店」という商店だった。当時の富士電機(のちの富士通信機製造、現在の富士通)の特約店として、電話交換機の工事と保守から事業をスタートしている。
そこから1941年に都築電話工業株式会社へ改組し、1991年に現在の「都築電気株式会社」へ商号変更。上場のほうは1986年に東証二部、2020年に東証一部、そして2022年4月から東証プライム市場だ。本社は東京都港区新橋にある。
| 年 | できごと |
| 1932年 | 名古屋で「都築商店」創業。富士電機(現・富士通)特約店として交換機の工事保守を開始 |
| 1941年 | 都築電話工業株式会社に改組 |
| 1986年 | 東京証券取引所市場第二部に上場 |
| 1991年 | 「都築電気株式会社」に商号変更 |
| 2020年 | 東京証券取引所市場第一部に指定 |
| 2022年 | 東京証券取引所プライム市場へ移行 |
| 2032年 | 創業100周年(予定) |
この表の最後の行、地味だが覚えておいてほしい。2032年に創業100周年。この会社が長期ビジョンの区切りを「2033年3月期」に置いているのは、偶然じゃない。100周年という節目から逆算して、経営計画が組まれている。後半で中期経営計画の話をするとき、ここがつながってくる。
何をして稼いでいるのか──「プロダクト」と「エンジニアリングサービス」の2本柱
ひとことで言えば、ICT(情報通信技術)の設計・構築・運用保守を丸ごと請け負う会社だ。
扱っているものを並べると、こうなる。PC、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器、PBX(オフィスの電話交換機)、そして会計・人事給与・電子カルテ・CADといった業務ソフト。企業のオフィスの「見えないインフラ」を、まるごと面倒みていると思ってもらえばいい。
ここで、多くの記事が触れていない重要な変化を伝えておきたい。
都築電気は2026年5月に公表した中期経営計画で、事業区分そのものを作り変えた。
| 新サブセグメント | 中身 |
| プロダクト | PC/サーバ/ストレージ/ミドルウェア/ネットワーク機器/PBX等の製品・サービスの販売 |
| エンジニアリングサービス | インフラ構築/ネットワーク設計・構築/システム・アプリケーション開発/音声基盤(PBX)構築/保守・運用・自社クラウド等、自社の技術を提供する領域 |
さて、ここからが本題だ。この2つ、どっちがどれだけ売上を稼いでいると思う?
2026年3月期の実績で言うと、エンジニアリングサービスの売上は311億円。全社の売上高は1,037億円。割り算すると——エンジニアリングサービスは約3割。残り約7割は「モノを仕入れて売る」プロダクト事業だ。
「SIerって、システム作る会社でしょ?」と思っていた人は、ここで一度認識を修正してほしい。都築電気は、実態としてはまだ「機器販売の比重が大きい会社」なんだ。
そして面白いのは、会社自身がそれを課題だと認めていることだ。中期経営計画には「プロダクト偏重からエンジニアリングサービスを軸としたサービス中心の収益モデルへの進化」とはっきり書いてある。「うちはまだモノ売りに偏っています」と公式に認めているわけだ。
この事実は、このあとの「弱み」の話にも「今後」の話にも、両方つながってくる。この記事の背骨だと思って覚えておいてくれ。
ボッチSIerって要はシステム作る会社っしょ? 都築電気もそれじゃん
ようこそれが半分しか合ってないの。売上の7割は機器を売ってる会社なんだよ
出典:都築電気 中期経営計画「Trust & Challenge 2029」/Wikipedia「都築電気」
会社の規模感──時価総額約739億円の「中小型株」だと知っておく
数字で規模を掴んでおこう。ここを飛ばすと、後で株価の話をするときに足元がぐらつく。
| 項目 | 数値 |
| 証券コード | 8157(東証プライム/情報・通信業) |
| 株価 | 3,895円(2026年7月17日終値) |
| 時価総額 | 約739億円 |
| 発行済株式総数 | 18,977,894株(2026年3月31日現在) |
| 単元株数 | 100株 |
| 従業員数 | 2,040名(2026年3月期時点) |
| 2026年3月期 売上高 | 1,037億2,800万円 |
時価総額739億円。この数字を、初心者向けに翻訳しておこう。
これは「中小型株」に分類される規模だ。兆単位の時価総額を持つ大型株と比べると、市場で売買される株数が圧倒的に少ない。それが何を意味するかというと——良いニュースでも悪いニュースでも、株価が飛びやすいということだ。
上がるときは気持ちいいほど上がる。下がるときは、売りたくても買い手が薄くて、気づけばストンと落ちている。この性質は、後で話す株主構成とも密接に関係してくる。
それと、実務的な数字をひとつ。単元株数は100株だから、株価3,895円なら最低投資金額は約39万円(+手数料)。新NISAの成長投資枠は年間240万円だから、枠としては十分に買える。
ただ、ここでひとつだけ問いを置いておきたい。
39万円。あなたの手取り月給の、何割にあたる金額だ?
その額を、今日はじめて名前を知った会社に預ける——という事実を、頭の隅に置いたまま読み進めてほしい。答えは記事の最後で一緒に出す。
出典:IR BANK 8157 都築電気/都築電気 株式の状況
「富士通の子会社」は誤解だ──株主名簿を開けば、この会社の正体が見える
ここが、この記事で一番読んでほしいパートのひとつだ。
「都築電気 富士通」で検索する人の頭の中には、たいていこういう連想がある。
- 富士通系=富士通の子会社なんだろ?
- じゃあ富士通の業績が悪くなったら、都築電気も一蓮托生じゃないか?
- 富士通の製品しか売れない「下請け」ってことか?
この3つ、全部ちがう。株主名簿を開けば一発で分かる。ほとんどの記事が「富士通系SIer」の一行で流しているが、俺はここを数字で解体したい。
筆頭株主は富士通ではない──大株主上位10名の実データ
2026年3月31日現在の大株主上位10名を、そのまま出す。
| 順位 | 株主名 | 持株数(千株) | 持株比率 |
| 1 | 株式会社麻生 | 4,500 | 23.97% |
| 2 | 富士通株式会社 | 2,402 | 12.80% |
| 3 | 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 1,699 | 9.05% |
| 4 | 扶桑電通株式会社 | 766 | 4.08% |
| 5 | 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 619 | 3.30% |
| 6 | 都築電気従業員持株会 | 567 | 3.02% |
| 7 | STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505019 | 334 | 1.78% |
| 8 | CACEIS BANK, LUXEMBOURG BRANCH | 260 | 1.39% |
| 9 | HTホールディングス株式会社 | 200 | 1.07% |
| 10 | 丸三証券株式会社 | 177 | 0.94% |
見てのとおりだ。
富士通は筆頭株主ですらない。持株比率12.80%の、第2位株主だ。
筆頭は株式会社麻生。23.97%。福岡を拠点に、セメント・医療・教育などを手がける非上場のグループ会社だ。2017年に第2位株主となった経緯があり、現在は最大の株主になっている。
連結子会社になるには、一般に議決権の過半数を握るか、実質的な支配関係が必要になる。12.80%は、そこから遠く離れた数字だ。
ようこじゃあ都築電気って、富士通の子会社じゃないんですか?
ちょく違う。12.8%で第2位だ。「富士通系」ってのは90年以上取引が続いてる歴史の話であって、支配されてるって意味じゃない
「富士通ディーラー」から「マルチベンダー」へ──関係の中身が変わってきた
出発点は、たしかに完全な富士通依存だった。1932年、富士電機の特約店として交換機の工事保守を始めた会社なんだから当然だ。
だが今は違う。中期経営計画のなかで、都築電気は自社の強みとしてこう書いている。
マルチベンダー(最適な選択)/SI・NIの高い技術力/有力なパートナー/コーディネート・運用までの提案力
先頭に「マルチベンダー」と置いている。つまり「富士通製品に限らず、顧客にとって最適な製品を組み合わせて提案できる立場」を、自ら競争力として掲げているわけだ。
じゃあ、これは投資家にとって良い話なのか。結論から言うと、良い面と悪い面が両方ある。片方だけ書くのはフェアじゃないから、両方並べる。
| 観点 | 内容 |
| ◎ メリット | 特定メーカーの製品競争力に業績が縛られない。顧客に「最適解」を提示できることが、そのまま提案力になる |
| ◎ メリット | 富士通の業績変動と一蓮托生ではない。分散が効いている |
| △ デメリット | 「独占的に売れる自社商品」を持たない。仕入れて組み合わせる立場である以上、粗利率に構造的な上限がある(2026年3月期の売上総利益率24.1%) |
| △ デメリット | 資本関係が薄まるほど、大手からの優先的な案件供給という後ろ盾も薄れていく |
「独立性が高い」というのは、聞こえはいい。だが投資の世界では、独立性が高いということは、誰も守ってくれないということでもある。自分の足で立てているうちはいいが、風が吹いたときに寄りかかる柱がない。この両面を、頭に入れておいてほしい。
投資家目線で見た株主構成の「本当のリスク」──浮動株の少なさ
誤解をひとつ解いたところで、代わりに新しいリスクをひとつ渡しておく。誤解を解いて安心させて終わり、という記事は信用しないほうがいい。
さっきの大株主表を、もう一度見てほしい。上位を単純に足していくとこうなる。
- 麻生 23.97% + 富士通 12.80% + 扶桑電通 4.08% + 従業員持株会 3.02% = 約43.9%
- ここに信託銀行の信託口(9.05%+3.30%)を加えると、上位6名だけで約56%
株主構成比率(単元株ベース)で見ても、その他法人が44.6%、個人その他が29.4%、金融機関17.3%、外国法人等6.7%、金融商品取引業者2.0%。「その他法人」が4割超という構成だ。
これが何を意味するか。市場で自由に売買される「浮動株」が、相対的に少ないということだ。
浮動株が少ない銘柄は、少ない売買で株価が大きく動く。上げるときは軽い。だが問題は下げるときだ。売りたいと思ったときに、買ってくれる相手がいない。
俺は昔、新興株やIPOで一発逆転を狙って3年間ほぼトータルマイナスという時期を過ごした。あの頃いちばん怖かったのは、含み損の数字そのものじゃない。板がスカスカで、売り注文を出しても約定しない画面を見つめている時間だった。指値を下げる。約定しない。また下げる。まだ約定しない。マウスを握った手のひらが、じっとり湿っていくあの感覚。
ちなみに会社もこれは課題として認識していて、前中期経営計画では「株式の売り出し、流動性改善」に取り組んだと明記している。会社自身が「流動性が足りない」と分かっているわけだ。この誠実さは評価していい。
ちょく株主構成には、その会社の”性格”が出る。誰が持ってるかで、株価の動き方まで変わるんだ
都築電気の強み──10年で営業利益率を4倍にした「地味な会社」の底力
「過去最高益」というニュースを見たとき、経験のある投資家ほど疑う。「たまたま良かっただけじゃないのか」と。
その疑いは正しい。そして、その疑いに対する最強の反論は、演説じゃない。時系列の数字だ。
強み①:営業利益率 2.0% → 7.9%。10年かけて別の会社になった
都築電気の最大の強みは、技術力でも顧客数でもない。「利益を出せる体質に、自分を作り変えた実行力」だ。
根拠を見せる。営業利益と営業利益率の10年推移だ。
| 決算期 | 営業利益(百万円) | 営業利益率 |
| 2016年3月期 | 1,594 | 2.0% |
| 2017年3月期 | 2,093 | 2.6% |
| 2018年3月期 | 2,248 | 2.7% |
| 2019年3月期 | 3,054 | 3.3% |
| 2020年3月期 | 4,289 | 4.2% |
| 2021年3月期 | 2,960 | 3.0%(↓) |
| 2022年3月期 | 3,400 | 3.7% |
| 2023年3月期 | 4,155 | 4.4% |
| 2024年3月期 | 5,925 | 5.8% |
| 2025年3月期 | 6,481 | 6.6% |
| 2026年3月期 | 8,178 | 7.9% |
10年で営業利益率が2.0%から7.9%へ。約4倍だ。営業利益の額で見れば、15.94億円から81.78億円へ、5倍以上になっている。
ここで俺が一番注目してほしいのは、実は2021年3月期の「凹み」のほうだ。4.2%から3.0%に落ちている。コロナ禍の影響だな。
なぜ凹みに注目するのか。きれいな右肩上がりのグラフほど、疑ってかかるべきだからだ。都合よく作られた数字は、たいていツルツルしている。この会社は一度落ちて、そこから5期連続で改善している。凹んで、立て直した記録があるほうが、俺は信用する。
で、何をして利益率を上げたのか。会社が挙げている施策はこうだ。
- プライシングマネジメント(適正価格の追求)──安値受注をやめた
- 採算性審査の厳格化──儲からない案件を取らないと決めた
- 開発案件の管理強化──不採算プロジェクトの発生そのものを抑え込んだ
- グループ再編──子会社を整理してソフトウェア開発力を集約
- 電子デバイス事業の売却──稼げない事業を切った
- AI活用による原価改善・社内業務効率化
結果として、売上総利益率は2023年3月期の19.5%から、2026年3月期には24.1%まで上がっている。
つまりこういうことだ。「景気が良かったから儲かった」んじゃない。「儲からない仕事を断れる会社になった」んだ。
これ、言葉にすると簡単そうだろ? だが現場を想像してみてくれ。長年つきあいのある顧客から「今回もいつもの値段で頼むよ」と言われて、「いえ、この価格ではお受けできません」と返す。あれをやり切るのは、経営としてはかなりの荒療治だ。
ボッチ利益率が上がったって、値上げしただけっしょ? ズルくね?
ちょく逆だ。安く受けて赤字になる仕事を、断れるようになったってことだ。これができない会社が、この業界にどれだけあると思う
強み②:前中期経営計画の数値目標を「全項目超過達成」した実績
中期経営計画というやつは、正直に言えば多くの会社で「絵に描いた餅」になる。立派な資料を作って発表して、3年後には誰も覚えていない、というパターンを俺は何度も見てきた。
だから俺は、新しい中期経営計画を評価するとき、必ず「前回の計画はどうだったか」を先に見る。
都築電気の前中計「Transformation 2026」(2023年3月期〜2026年3月期)の結果がこれだ。
| 項目 | 目標 | 2026年3月期 実績 | 達成率/差 |
| 売上高 | 1,022億円 | 1,037億円 | 101.5%(+15億円) |
| 営業利益 | 55億円 | 81億円 | 147.3%(+26億円) |
| ROE | 10%以上 | 14.0% | +4.0pt |
全項目、超過達成。とくに営業利益は目標の1.47倍だ。
これは「保守的な目標を立てて楽に達成した」というレベルの話じゃない。55億円を目指して81億円出したというのは、会社が計画時点で見えていなかった上振れ要因を、実行力で取りに行ったということだ。
ただし、ここで一本釘を刺しておく。過去の達成は、未来を保証しない。しかも次の計画のハードルは前回より明確に高い。それは後半の「今後」のパートで、数字を並べて検証する。
強み③:SI(システム)とNI(ネットワーク)の両刀使い
都築電気が自認する優位性のひとつが、これだ。中期経営計画にはこう書かれている。
SI・NIの両領域の技術と深い顧客理解・業界知見を有する当社にとって、成長機会が大きく拡大する見込み
用語を噛み砕こう。
SIとNIって何が違うの?(クリックで開く)
SI(システムインテグレーション)は、会社の業務システムを設計して作る仕事。会計システム、人事システム、電子カルテなど、「業務を回すためのソフト」を組み上げる側だ。
NI(ネットワークインテグレーション)は、その土台になる通信環境を作る仕事。オフィスの配線、ネットワーク機器の設置と設定、セキュリティ対策、電話交換機の構築など、「情報が流れる道」をつくる側だ。
業界では、この2つは別々の会社が担当するのが一般的。システム会社は「ネットワークはお客様の別業者さんで」と言い、ネットワーク会社は「業務システムのことは分かりません」と言う。結果、顧客は複数の会社に頭を下げて回ることになる。
都築電気は、この両方をやる。中期経営計画には「通信インフラの基礎(配線・設備構築)から運用まで一気通貫で提供できる優位性」という表現がある。
家を建てるときで例えるとわかりやすい。電気工事だけやる業者と、間取りの設計から配線・水道・引き渡し後の点検までまとめて面倒みてくれる業者。あなたならどっちに頼む? 多少高くても、後者に頼みたくならないか。
そしてこの優位性は、精神論じゃなく数字で裏づけられている。ネットワーク&セキュリティ領域のエンジニアリングサービス売上は、2023年3月期から2026年3月期にかけて年平均成長率(CAGR)20.3%で伸びた。同社が参照している市場の成長率(FY25-28のCAGR)は6.5%だから、市場の3倍のスピードで伸びている計算になる。
強み④:2万社の顧客基盤と、売上の約4割を占めるストック型ビジネス
中期経営計画のタイトルは「Trust & Challenge 2029」。このTrust(信頼)の中身として、会社は3つの資産を挙げている。
- 2万社の顧客基盤
- 2千社を超える共創パートナー
- 価値観に共感して集まるプロフェッショナル人材
さらに細かく見ると、常時アクセスできる顧客が2,600社、そのうち大手顧客が100社。大手顧客1社あたりの平均売上高は、2023年3月期〜2026年3月期の平均で5億3,000万円だ。
だが俺が投資家として一番評価するのは、顧客数そのものより「ストック型売上」のほうだ。
| 決算期 | ストック型売上高(百万円) | 区分 |
| 2024年3月期 | 38,309 | 実績 |
| 2025年3月期 | 39,036 | 実績 |
| 2026年3月期 | 39,391 | 実績 |
| 2027年3月期 | 41,000 | 見通し |
| 2028年3月期 | 43,600 | 見通し |
| 2029年3月期 | 46,300 | 目標 |
ストック型売上とは、保守・運用・回線の月額費用・自社クラウドサービスなど、毎月自動的に入ってくる売上のこと。都築電気の場合、売上に占めるストック/フロー比率は過去3ヵ年平均でストック型が約4割、フロー型が約6割だ。
なぜこれが強みなのか。フロー(都度の案件)は景気が悪くなれば消える。だがストック(月額)は簡単には消えない。顧客が保守契約を切るということは、システムを止めるということだからだ。そう簡単にはできない。
投資に置き換えるなら、ストック型売上は配当みたいなもんだ。派手じゃない。心も躍らない。でも消えない。そして「消えない」というのは、長期で見ると恐ろしく強い。
強み⑤:自己資本比率55.1%という財務の余裕
最後は財務だ。数字だけ先に出す。
| 指標 | 数値 | 意味 |
| 自己資本比率 | 55.14% | 借金に頼らず自前の資本で事業を回せている割合。一般に50%超なら財務は健全とされる |
| ROE(実績) | 14.0% | 株主から預かった資本で年14%の利益を生んでいる。日本企業の平均を上回る水準 |
| ROA(実績) | 7.39% | 総資産に対する利益率 |
自己資本比率55.1%。ROE14.0%。財務は健全で、資本効率も悪くない。ここは素直に評価していい。
ただし——この余裕は、これから使うための余裕でもある。会社はこの体力を背景に、次の3年で大きな勝負に出ようとしている。それが後で話す「戦略投資400億円」だ。今は伏線だけ置いておく。
- 10年で営業利益率2.0%→7.9%。「儲からない仕事を断れる会社」に変わった
- 前中期経営計画は全項目超過達成。営業利益は目標の1.47倍
- SIとNIの両刀使い。配線から運用まで一気通貫で請け負える
- 2万社の顧客基盤。ストック型売上が約4割で業績の底を支える
- 自己資本比率55.1%、ROE14.0%の財務健全性
都築電気の弱み・リスク5つ──ここを見ないで買うと、あとで理由が説明できなくなる
さて、ここからがこの記事を書いた本当の理由だ。
会社のIRページには、この章は絶対に載らない。載せる義務がないからだ。ニュース記事にも載らない。「過去最高益」のほうが見出しになるからだ。
だが買う側にとっては、強みより弱みのほうが100倍大事だ。理由は単純で、強みはすでに株価に織り込まれている。弱みは、たいてい織り込まれていない。
これから挙げる5つは、すべて公開されているIR資料の数字から論理的に導いたものだ。噂話でも憶測でもない。順番に見ていこう。
弱み①:人がほとんど増えないのに、売上を伸ばす計画になっている
これが、俺がこの会社の資料を全部読んで一番「おっ」と声が出た論点だ。他のどのサイトにも書かれていない。
中期経営計画に載っている、従業員数の計画を見てくれ。
| 決算期 | 従業員数 |
| 2026年3月期 | 2,040名 |
| 2027年3月期 | 2,062名 |
| 2028年3月期 | 2,066名 |
| 2029年3月期 | 2,095名 |
3年間で、たった+55名。増加率にして約2.7%だ。
で、同じ3年間の業績目標がこれだ。
| 項目 | 2026年3月期 | 2029年3月期 目標 | 伸び |
| 従業員数 | 2,040名 | 2,095名 | +2.7% |
| 売上高 | 1,037億円 | 1,200億円 | +15.7% |
| 営業利益 | 81.78億円 | 120億円 | +46.7% |
もう一度言う。人はほぼ増えない。なのに売上は15.7%、営業利益は46.7%増やす計画だ。
SIerというのは、典型的な労働集約型のビジネスだ。エンジニアの時間が商品そのもの。工場のように機械を増やせば生産量が上がる世界じゃない。この構造で増収増益を実現するには、道はひとつしかない。1人あたりの生産性を、大幅に上げること。
会社もそれは自覚している。ちゃんとKPIに置いている。
- プロジェクト回転率(エンジニアリングサービス売上高 ÷ 期末エンジニア人員数):2026年3月期→2029年3月期で+20%
- 管理部門売上高生産性(売上高 ÷ 期末管理部門人員数):同じく+20%
そしてその手段が、「AI Native への移行」だ。
つまり整理するとこうなる。
この中期経営計画は、「AIで生産性が2割上がる」という前提に賭けた計画である。
採用計画も一応見ておこう。キャリア採用は42名(2026年3月期)から63名(2029年3月期)へ、新卒採用は50名から93名へ増やす方針だ。採用自体は増やしている。だが定年退職などによる減少とほぼ相殺され、純増は先ほどの+55名にとどまる。
これを弱みと呼ぶべきかどうかは、正直、意見が分かれると思う。俺の見方はこうだ。
これは弱みというより「この計画の成否がどこで決まるか」を示す一点だ。人が増えないなら、AIが本当に効いたかどうかで全部が決まる。だから四半期決算で見るべきは、売上の絶対額じゃない。1人あたりの数字だ。
ようこ人が増えないのに売上を15%も増やすって、現場は大丈夫なんでしょうか…
ちょくそこだよ。AIで生産性が上がれば達成できる。上がらなければ、現場が疲弊するか計画が未達になるかのどっちかだ。だから俺は「AIをどう使ってるか」の説明を毎回読む
弱み②:売上の約7割は、まだ「仕入れて売る」ビジネス
記事の前半で背骨だと言った話が、ここで効いてくる。
2026年3月期のエンジニアリングサービス売上は311億円。全社売上1,037億円で割ると約30%。残り約70%はプロダクト、つまり機器を仕入れて売る事業だ。
なぜこれが弱みなのか。3つある。
| 論点 | 内容 |
| 粗利率に構造的な上限がある | 仕入れて売るビジネスは、自社で価値を生む部分が薄い。2026年3月期の売上総利益率24.1%は、23年3月期の19.5%から大きく改善したとはいえ、サービス業としては高くない |
| 需要の波に振り回される | 企業のIT投資サイクル(PCの入れ替え時期など)に売上が左右される。自社ではコントロールできない |
| メーカー要因に業績が効く | メーカーの価格政策、供給状況、製品競争力といった外部要因が、そのまま業績に響く |
繰り返しになるが、会社自身がこれを課題として明記している。「プロダクト偏重からエンジニアリングサービスを軸としたサービス中心の収益モデルへの進化」——この一文は、裏を返せば「現状はプロダクト偏重です」という自己申告だ。
だから目標も置いている。エンジニアリングサービス売上を311億円(2026年3月期)→ 323億円(2027年3月期)→ 406億円(2029年3月期)へ。年平均成長率9.3%の計画だ。
ただし、ここで冷静に計算してみてほしい。2029年3月期に406億円を達成したとして、売上目標1,200億円に対する比率は約34%だ。
つまり——3年後もまだ、売上の3分の2はプロダクトのままという計算になる。
転換は始まっている。それは確かだ。でも終わってはいない。「サービス企業に生まれ変わりました」と評価するには、まだ何年もかかる。この会社を「高収益なIT企業」として買うなら、その前提が現実になるまでの時間を、あなたが待てるかどうかが問われる。
弱み③:Windows 10更新特需の反動という「見えている逆風」
これは、知っている人と知らない人で判断が大きく変わる論点だ。
都築電気は、2026年3月期の売上拡大要因のひとつとして、はっきりこう書いている。
Windows 10サポート終了に伴う更新需要
OSのサポート終了に伴うPC・サーバの一斉入れ替えというのは、数年に一度しか起きないイベントだ。しかも性質が悪いことに、将来の需要を前倒しで食ってしまう。今年10台入れ替えた会社は、来年はもう入れ替えない。
つまり、2026年3月期の好業績には、繰り返されない一過性の追い風が含まれている。
それが数字にどう出ているか。2027年3月期の会社予想を並べてみよう。ここ、めちゃくちゃ重要だから、じっくり見てほしい。
| 項目 | 2026年3月期 実績 | 2027年3月期 会社予想 | 増減 |
| 売上高 | 1,037.28億円 | 1,070億円 | +3.2% |
| 営業利益 | 81.78億円 | 87億円 | +6.4% |
| 経常利益 | 83.20億円 | 87億円 | +4.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 64.72億円 | 57.50億円 | ▲11.2% |
気づいたか。営業利益と経常利益は増益予想なのに、純利益は減益予想だ。
これは前期に特別利益などが含まれていた影響とみられる。だが問題はそこじゃない。問題は——「5期連続 過去最高益」という見出しだけを見ていると、純利益が1割減ることに気づかないということだ。
そしてこれは、株価指標に直結する。EPS(1株利益)は実績355.9円から、予想315.7円へ下がる。PERを計算するときの分母が変わるということだ。実績EPSで計算すれば見かけのPERは低く出るが、それは前期の特殊要因を含んだ数字であって、今の実力を表していない。
俺はこれで一度やられている。
20代の頃、「〇〇社、過去最高益!」というニュースを見て、その日のうちに買ったことがある。理由はそれだけ。決算短信は開いてすらいない。数ヶ月後、株価は買値の3割下だった。あとから決算資料をちゃんと読んで、その「最高益」が資産売却益で嵩上げされたものだったと知った。本業の利益は、前の年より減っていた。
そのとき学んだことを、そのまま渡しておく。決算は見出しじゃなく、営業利益と純利益を分けて見ろ。本業で稼いだ利益と、たまたま入ってきた利益は、まったく別物だ。
弱み④:時価総額の半分を超える「戦略投資400億円」という賭け
新しい中期経営計画で、都築電気は次の3年間のキャッシュの使い道を明示している。
| 区分 | 規模 | 使い道 |
| 成長投資 | 70億円規模 | 人的資本(採用・待遇改善・教育)、テクノロジー(商品・サービス開発)、社内IT/AI |
| 戦略投資 | 400億円規模 (借入による資金調達含む) | M&A、資本業務提携、ベンチャーキャピタルの活用 |
ここで思い出してほしい。この会社の時価総額は約739億円だ。
時価総額の半分を超える規模の投資枠を、これから使おうとしている。
会社は無鉄砲にやるつもりはないようで、M&Aの候補先は4類型(戦略フィット型/規模拡大型/キャッシュカウ型/近隣領域・飛び地進出型)で判断し、財務規律として自己資本比率40〜50%、Net D/Eレシオ0.4倍未満を維持するとしている。回収期間の合理性も判断基準に入れている。
それでも、これは賭けだ。両面を並べる。
| ◎ 上振れシナリオ | △ 下振れシナリオ |
| 良いM&Aができれば、自力成長では届かない売上・利益を一気に取り込める(非連続成長) | 高値づかみやPMI(買収後の統合)失敗で、のれん減損が発生する |
| 「人が増えない問題」を、会社ごと買うことで解決できる | 借入で財務レバレッジが上がる。自己資本比率55.1%が、規律の下限である40%台まで低下する可能性 |
| 新領域への進出が加速し、成長の天井が上がる | 前中計では「戦略的投資の余力は高まるも実行ならず」と会社自ら振り返っている=実行の実績がまだない |
最後の行が、俺は一番気になっている。
前の中期経営計画の期間中、この会社は戦略投資を実行できなかった。資料に「実行ならず」と正直に書いてある。つまり400億円という枠は、まだ一度も使われたことのない武器だ。
M&Aは博打じゃない。ちゃんとやれば有効な手段だ。だが「成功確率が高い」とも言えない。世の中には、のれん減損で一発KOになった会社がいくらでもある。この400億円は、都築電気にとって最大のアップサイドであり、同時に最大のダウンサイドでもある。
弱み⑤:配当性向60%は「利益が伸び続ける前提」で組まれている
高配当に惹かれてこの銘柄を見つけた人は、ここを絶対に飛ばさないでほしい。
2027年3月期から、都築電気は配当方針を大きく変更した。
| 項目 | 従来 | 2027年3月期から |
| 連結配当性向 | 40% | 60% |
| 下限DOE(株主資本配当率) | 3.5% | 6.0% |
これにより、2027年3月期の年間配当予想は190円。前期の126円から+64円という大幅増配で、6期連続の増配計画になる。
ここまでは、株主にとって嬉しい話だ。だが冷静に見よう。
配当性向60%とは、稼いだ利益の6割を配当に回すということだ。内部留保に残るのは4割しかない。そして——
- 利益が減れば、配当も機械的に減る設計になっている
- 2027年3月期の純利益予想は前期比▲11.2%。それでも増配できるのは、配当性向を大きく引き上げたからだ
- 配当性向60%を維持しながら成長投資70億円+戦略投資400億円を実行するには、借入に頼る必要がある(会社も「借入による資金調達含む」と明記している)
ただし、公平のために「安心材料」も書いておく。
「DOE」って何? 配当性向とどう違うの?(クリックで開く)
配当性向は「その年の利益のうち、何%を配当に回すか」。分母は利益だ。だから利益がブレると、配当もブレる。
DOE(株主資本配当率)は「株主資本に対して何%を配当するか」。分母は株主資本だ。株主資本は利益ほど激しく変動しないから、DOEを基準にすると配当が安定しやすい。
都築電気は「配当性向60%」と「下限DOE6.0%」を両方掲げている。これは「利益が伸びたら配当性向60%で大きく出す。利益が落ちてもDOE6.0%が下支えする」という二段構えの設計だ。減配リスクを和らげる仕組みが入っている、と理解していい。
整理すると、結論はこうなる。
| ◎ | 株価下落による高利回りではなく、方針変更による意図的な高配当。健全なタイプだ |
| ◎ | DOE下限6.0%があるため、急激な減配は起きにくい設計 |
| △ | ただし無条件ではない。利益が構造的に落ちれば、配当も落ちる |
| △ | 配当性向がすでに60%に達している以上、「今後さらに配当性向を上げて増配」という余地は乏しい。ここから先の増配は、利益成長に完全に依存する |
ボッチ配当利回り5%近いじゃん! NISAで全力ぶっこみだわ!
ちょく待て。その利回りは「来期の予想配当」で計算した数字だ。予想は予想。減益になれば配当も動く。利回りは確定した果実じゃない、あくまで予定だ
- ① 3年で従業員+55名。人が増えないのに売上+15.7%・営業利益+46.7%を目指す。AIによる生産性+20%に賭けた計画
- ② 売上の約7割はまだプロダクト(機器販売)。3年後も3分の2はプロダクトの計算
- ③ Windows 10更新特需の反動。2027年3月期の純利益は▲11.2%の減益予想
- ④ 戦略投資400億円は時価総額の半分超。前中計では実行実績なし
- ⑤ 配当性向60%は利益成長が前提。ここから先の増配は利益次第
都築電気の株価は割安なのか──指標で見る「今の値段」
ここまでで、会社の中身は見えてきたと思う。次は値段の話だ。
先に大事なことを言っておく。「株価3,895円」という数字そのものには、何の意味もない。1株1万円の会社が割高で、1株500円の会社が割安、なんてことはない。見るべきは指標だ。
執筆時点の株価と主要指標
| 指標 | 数値 |
| 株価 | 3,895円(前日比 ▲100円、▲2.50%) |
| 時価総額 | 約739億円 |
| 予想PER | 12.34倍 |
| PBR | 1.47倍 |
| 予想配当利回り | 4.88% |
| EPS(実績) | 355.9円 |
| EPS(予想) | 315.7円 |
| BPS | 2,652.72円 |
| ROE(実績/予想) | 14.0% / 11.9% |
| ROA(実績) | 7.39% |
| 自己資本比率 | 55.14% |
※2026年7月17日時点。株価・指標は日々変動する。
株価の位置についても触れておく。都築電気は2026年2月27日に上場来高値4,200円をつけている。執筆時点の3,895円は、高値から約7%下の水準だ。つまり「高値から少し押している場面」ということになる。
出典:IR BANK 8157 都築電気/Yahoo!ファイナンス 8157
指標の読み方──初心者向けの翻訳
数字を並べただけでは意味がない。ひとつずつ翻訳する。
PER・PBR・配当利回りって結局なに?(クリックで開く)
PER(株価収益率)=株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)。「今の利益水準が続くとして、株価を回収するのに何年かかるか」を表す。数字が小さいほど、利益に対して株価が安いということになる。
PBR(株価純資産倍率)=株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)。「会社を今すぐ解散して資産を分けたときの価値」に対して、株価が何倍かを表す。1倍を割ると「解散価値以下で放置されている」状態になる。
配当利回り=1株あたり年間配当 ÷ 株価。投資額に対して年何%の配当がもらえるかを表す。ただし「予想」配当で計算されている点に注意。予想は変わる。
そのうえで、都築電気の数字を読むとこうなる。
- 予想PER 12.34倍──東証プライムの平均的な水準よりは低め。ただし低PERには「市場が将来の成長をあまり期待していない」という解釈もありうる。安いには安いなりの理由があることも多い
- PBR 1.47倍──1倍割れが問題視される日本市場において、1倍を明確に超えていること自体が評価の証
- 予想配当利回り 4.88%──東証プライム平均を大きく上回る。ただし前章で見たとおり、これは方針変更の産物である
ひとつ注意点を添えておく。PERの分母であるEPSは、予想315.7円だ。実績の355.9円で計算すると、見かけのPERは10.9倍まで下がる。だがそれは前期の特殊要因を含んだ数字だ。安く見せたいなら実績EPS、実態を見たいなら予想EPS。どちらの数字を使っているサイトなのか、必ず確認する癖をつけてほしい。
PBRの推移が語る「市場の評価の変化」
ここは、この記事のなかでも特に面白いところだ。PBRとROEを並べて時系列で見ると、市場がこの会社をどう見てきたかが一目でわかる。
| 決算期 | PBR | ROE |
| 2021年3月期 | 0.9倍 | 7.7% |
| 2022年3月期 | 0.8倍 | 8.8% |
| 2023年3月期 | 0.8倍 | 10.4% |
| 2024年3月期 | 1.0倍 | 14.5% |
| 2025年3月期 | 0.9倍 | 11.3% |
| 2026年3月期 | 1.3倍 | 14.0% |
2022年3月期と2023年3月期を見てくれ。PBR0.8倍。解散価値以下で放置されていた。ROEは8.8%、10.4%とすでに悪くない水準だったのに、だ。
それが2026年3月期には1.3倍まで回復している。執筆時点の株価で計算すれば1.47倍だ。
つまり、市場はこの会社の改革を「ようやく評価し始めた」段階にある。
ここで、都合の悪いことも言わなきゃいけない。「評価され始めた」ということは、裏返せば「もう安くはない」ということでもある。
- PBR0.8倍のときに買った人 → 誰も見向きもしない時期に割安を拾った
- PBR1.47倍の今 → 改革の成果が、ある程度は株価に織り込まれた後
会社自身も、ここから先をどう戦うか明示している。新中計では株主資本コストを9〜10%と置き、エクイティスプレッド4.5〜5.5ptを確保する方針を掲げた。ROE14.5%以上を維持することで、PBRをさらに引き上げるという考え方だ。
俺の見方を正直に言う。
PBR1倍割れの頃に買えていたら最高だった。でも過去は買えない。今の1.47倍が高いか安いかは、結局のところ「2029年3月期に営業利益120億円を本当に達成できるか」で決まる。
つまり値段の判断は、中期経営計画の信頼度の判断とイコールなんだ。だから次の章が、この記事で一番大事になる。
ちょく指標ってのは体温計だ。熱があるかは分かるが、病名までは教えてくれない。病名を知りたきゃ中身を読め
配当190円の正体──「太っ腹」ではなく「設計」だと知ってほしい
予想配当利回り4.88%。この数字を見たとき、経験のある投資家の頭には2つの感情が同時に湧く。
「うまい」と「怪しい」だ。
その警戒は正しい。利回りが高いのには必ず理由がある。だからここでは、その理由を数字で解剖する。
12年分の配当推移──増配は今年始まった話ではない
| 決算期 | 年間配当 | 配当性向※ | DOE |
| 2016年3月期 | 15円 | 25.7% | 0.9% |
| 2017年3月期 | 18円 | 17.7% | 1.1% |
| 2018年3月期 | 29円 | 30.2% | 1.8% |
| 2019年3月期 | 39円 | 30.3% | 2.4% |
| 2020年3月期 | 55円 | 30.2% | 3.3% |
| 2021年3月期 | 46円(減配) | 34.3% | 2.7% |
| 2022年3月期 | 48円 | 30.3% | 2.7% |
| 2023年3月期 | 61円 | 30.9% | 3.2% |
| 2024年3月期 | 90円 | 41.3% | 4.3% |
| 2025年3月期 | 99円 | 40.3% | 4.2% |
| 2026年3月期 | 126円 | 40.2% | 5.0% |
| 2027年3月期(予想) | 190円 | 60.2% | 7.0% |
※配当性向は事業活動利益ベース
10年で配当が15円から126円へ。約8.4倍だ。これは立派な数字だと思う。
だが俺がこの表で一番見てほしいのは、そこじゃない。2021年3月期の行だ。
55円 → 46円。この会社は、業績が落ちた年に、実際に減配している。
覚えているか。営業利益率の表でも、2021年3月期は4.2%→3.0%に凹んでいた。利益が落ちた年に、この会社は配当も落としたんだ。
これは責めているんじゃない。むしろ経営としては誠実な判断だ。無理して配当を維持して財務を痛める会社より、よほどまともだ。ただし投資家としては、「この会社は減配する会社だ」という事実を、事実として頭に入れておく必要がある。「連続増配銘柄だから安心」というタイプの株ではない。
190円という数字は、どこから出てきたのか
結論から言う。190円は、社長が気前よく決めた数字じゃない。方針から機械的に逆算された数字だ。
検算してみせよう。
2027年3月期の予想EPS 315.7円 × 新配当性向 60% = 約189.4円
→ 会社予想の年間配当「190円」とほぼ完全に一致する。
ピタリと合う。つまり190円は「方針の産物」であって、業績の上振れボーナスではない。
これを理解すると、頭の中で3つのことが同時に整理される。
| ①株価下落による高利回りではない | 分子(配当)を意図的に増やした結果だ。株価が売られて利回りが跳ね上がった「危険な高配当」とは性質が違う |
| ②急減配は起きにくい | 下限DOE6.0%が設定されているため、利益が一時的に凹んでも株主資本ベースで配当が支えられる |
| ③ただし無条件ではない | 配当性向60%=利益が減れば配当も連動して減る。しかも2021年3月期に実際に減配した実績もある |
「良い高配当だが、無条件の高配当ではない」——これが、この銘柄の配当に対する正確な評価だと俺は思っている。
新NISAで持つなら知っておきたい、配当と非課税の関係
ここは実務の話だ。地味だが、知らないと損をする。
通常の特定口座・一般口座では、配当金に約20.315%の税金がかかる。だがNISA口座(成長投資枠)で保有していれば、配当金は非課税だ。年間190円の配当なら、100株で19,000円。特定口座なら約3,860円が税金で引かれるところが、まるまる手元に残る。
ただし、落とし穴がいくつかある。
| 注意点 | 内容 |
| 受取方式に注意 | 上場株式の配当を非課税で受け取るには、証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選択している必要がある。郵便局等で受け取る配当金領収証方式のままだと、NISA口座でも課税される |
| 損益通算ができない | NISA口座で発生した損失は、他の口座の利益と損益通算できない。繰越控除もできない |
| 非課税枠の復活は翌年 | 売却しても、簿価分の枠が再利用できるのは翌年以降 |
| 元本保証はない | 非課税でも株価が下がれば元本割れする。制度は税金を減らすが、リスクは1ミリも減らさない |
最後の行を、もう一度読んでほしい。
非課税というのは「利益が出たとき」だけありがたい制度だ。損したら非課税もクソもない。むしろ損益通算ができないぶん、特定口座より不利になる場面すらある。
ここを勘違いすると、「NISAだから安全」という、投資で一番危険な誤解に落ちる。俺の周りにも、これで痛い目を見た人が何人もいる。
ボッチNISAなら非課税なんだから、損しないってことっしょ?
ようこ…逆だよ。損しても税金の面で救済されないの。むしろ普通の口座より不利になる場合すらあるんだから
都築電気の今後・将来性──中期経営計画「Trust & Challenge 2029」を読み解く
ここが「将来性」「今後」というキーワードに対する、本丸の回答だ。
ありがたいことに、都築電気は2026年5月15日に新しい中期経営計画を公表している。しかも数値目標がかなり細かく開示されている。予想するんじゃない。会社が公表した数字を読むだけでいい。
3年後の目標数値──売上1,200億円・営業利益120億円
新中計「Trust & Challenge 2029」は、2027年3月期から2029年3月期までの3か年計画だ。
| 項目 | 2026年3月期 実績 | 2029年3月期 目標 | 伸び |
| 売上高 | 1,037億円 | 1,200億円 | 115.7%(CAGR +5.0%) |
| 営業利益 | 81.78億円 | 120億円 | 146.7%(CAGR +13.6%) |
| 営業利益率 | 7.9% | 10.0% | +2.1pt |
| ROE | 14.0% | 14.5%以上 | — |
注目してほしいのは、売上の伸び(+15.7%)より、営業利益の伸び(+46.7%)のほうが圧倒的に大きいことだ。
これは意図的な設計だ。会社はこの3年を「2nd Stage」と位置づけている。1st Stage(Transformation 2026)が「成長領域へのリソースシフト・高収益体質への転換」だったのに対し、2nd Stageのテーマは「成長領域のスケーリング・新領域の開拓」。体質改善が終わったから、次は伸ばす段階だと宣言している。
長期ビジョンは「上方修正」された──2033年3月期に売上1,500億・営業利益180億
ここ、地味だが個人的にはこの中計で一番評価しているポイントだ。
中計の発表と同時に、都築電気は長期ビジョン(2033年3月期の挑戦目標)を上方修正した。
| 項目 | 旧目標 | 新目標(上方修正後) |
| 売上高 | 1,500億円 | 1,500億円(据え置き) |
| 営業利益 | 100億円 | 180億円 |
| 営業利益率 | 6.7% | 12.0% |
| ROE | 15.0% | 17.0% |
気づいたか。売上目標は1,500億円のまま据え置きで、利益目標だけを1.8倍に引き上げている。
これは、はっきりした意思表示だ。
「規模を追うのをやめる。質を追う。」
売上目標を上げずに利益目標を1.8倍にするというのは、「安く受けて売上を作る」というやり方を完全に捨てるという宣言に等しい。俺はこの上方修正の”仕方”を、けっこう高く評価している。数字を大きく見せたいだけなら、売上目標も一緒に引き上げるほうが簡単だからだ。
ちなみにこの2033年3月期という区切りは、1932年創業の会社が100周年を迎える2032年の、その翌期にあたる。会社の歴史から逆算された数字なわけだ。
成長の中核「エンジニアリング・コア4領域」の中身
じゃあ、その利益はどこから生まれるのか。会社は「エンジニアリング・コア4領域」という4つの成長中核領域を設定している。
| 領域 | 2026年3月期 | 2029年3月期 目標 | 目標CAGR |
| ネットワーク&セキュリティ | 76億円 | 102億円 | +10.3% |
| ビジネスアプリケーション | 89億円 | 103億円 | +4.9% |
| CXコミュニケーションプラットフォーム | 37億円 | 40億円 | +3.3% |
| ITプラットフォーム | 30億円 | 39億円 | +8.6% |
それぞれ簡単に説明しておく。
- ネットワーク&セキュリティ──ネットワーク構築とセキュリティ対策。成長率が最も高い領域。会社が参照する市場CAGR(FY25-28)6.5%を上回る目標を置いている
- ビジネスアプリケーション──T-Cloudシリーズ、医療システム、ERPなど。売上規模は最大。前中計でDXコンサルティング売上が約6倍に伸びており、そこからの受注転換が期待されている
- CXコミュニケーションプラットフォーム──ユニファイドコミュニケーション(UC)とコンタクトセンター(CC)。CCは目標CAGR+11.4%と高い一方、UCは+0.5%とほぼ横ばい計画
- ITプラットフォーム──オンプレミス・クラウド両環境の基盤構築。前中計でプロダクト売上がCAGR15.8%で伸びており、そこにエンジニアリングを付加していく戦略
エンジニアリングサービス全体では、311億円(2026年3月期)→ 323億円(2027年3月期)→ 406億円(2029年3月期)/CAGR 9.3%という計画だ。
ここで、冷静な指摘をひとつ。
コア4領域の合計は、2026年3月期で232億円。エンジニアリングサービス全体311億円の約75%を占める。つまり成長の大半をこの4領域が担う設計だ。だがCXのUC部分はほぼ横ばい計画。そうなると実質的な牽引役は、ネットワーク&セキュリティとITプラットフォームの2つに絞られる。
成長エンジンが2つ。多いとは言えない。どちらかが失速したとき、代わりに引っ張る領域があるかどうか——ここは監視しておくべきポイントだ。
「AI Native」への移行──追い風か、それとも自分の首を絞めるか
あなたも、心のどこかでこう思っていないか。
「AIがコードを書く時代に、システム開発会社なんて生き残れるのか?」
これはSIer銘柄を見るとき、誰もが抱く根源的な不安だ。そして多くの会社は、この問いに正面から答えない。「DXの追い風を受けて」みたいな、都合のいい話だけをする。
だが都築電気は、この問いから逃げていない。中期経営計画に、こう書いている。
| 環境変化 | 会社の認識 |
| AIによる生産性革命 | ソフトウェア開発の生産性が飛躍的に向上。内製化の進展などSI領域の競争環境は変化 |
| 求められる価値の変化 | AIによる自動化が進展し、単純な開発・構築の価値は相対的に低下。一方で顧客理解や業界知見に基づく全体設計の重要性が高まる |
| インフラ需要の拡大 | ネットワーク・インフラ構築に対するニーズが拡大 |
読んでほしい。「単純な開発・構築の価値は相対的に低下する」——これ、自社の事業の一部について「価値が下がります」と公の資料に書いているんだ。
俺は、ここを評価する。
「リスクに触れていない会社」より、「リスクを認めて手を打っている会社」のほうが、投資対象としてはるかに信用できる。
打ち手は「AI Native への移行」。従来の「ツールとしてのAI(個別業務の効率化)」から、業務プロセス・ビジネスモデル・組織文化のすべてをAI前提で再設計するという方向転換だ。KPIは前に出したとおり、プロジェクト回転率+20%、管理部門売上高生産性+20%。
ただし、これも両面がある。
| ◎ AIが追い風になる場合 | △ AIが逆風になる場合 |
| 開発生産性が上がり、少ない人数で多くの案件をこなせる(=弱み①の解決) | 顧客がAIで内製化し、そもそも外注しなくなる |
| ネットワーク・インフラ構築需要が拡大し、同社のNI技術が顧客接点の起点になる | 単純な構築の価格競争が激化し、利益率が下がる |
| 顧客理解×業界知見に基づく全体設計の価値が上がる | 全体設計ができる高度人材の獲得競争が激化する(人が増えない計画との矛盾) |
俺の総括はこうだ。AIはこの会社にとって、最大の追い風であり、同時に最大の逆風でもある。どっちに転ぶかは、たぶん3年後じゃなく、1年後の決算で見え始める。
では、この中期経営計画は達成できるのか──3つの根拠と3つの懸念
ここまでの材料を全部テーブルに乗せて、判断してみよう。
達成を支持する3つの根拠
- 前中計を全項目超過達成した実績──営業利益は目標の147.3%。計画を出してやり切る文化がある
- ストック型売上が着実に積み上がっている──2026年3月期393.91億円 → 2029年3月期463億円計画。売上の4割が下支えになる
- 収益改革の手法が確立している──プライシングマネジメント、採算性審査の厳格化。「やり方を知っている」というのは強い
達成を疑わせる3つの懸念
- 人がほぼ増えない──3年で+55名。生産性+20%という前提が崩れると、計画も一緒に崩れる
- Windows 10特需の反動──2027年3月期の売上成長率予想は+3.2%。目標CAGR+5.0%を下回る滑り出しだ
- 戦略投資400億円は未実行──非連続成長の部分は、まだ絵に描いた餅の状態
で、結局どうなのか。
正直に言う。達成できるかどうかを、今ここで断定するのは不可能だ。断定している記事があったら、その記事のほうを疑ったほうがいい。
だが——ひとつだけ、はっきりしていることがある。
「何が達成されれば計画通りなのか」は、数字ではっきり決まっている。
だったら、俺たちがやるべきことは予想じゃない。確認だ。
その具体的なやり方を、最後の章で渡す。
出典:都築電気 中期経営計画「Trust & Challenge 2029」(2026年5月15日公表)
新NISAで都築電気とどう向き合うか──俺なりの現実的なルール
ここまで読んでくれてありがとう。最後は、この情報をどう使うかの話だ。
大前提:コアは絶対に崩さない
俺の投資歴15年のうち、最初の5年は迷走だった。
根拠のない個別株集中投資で半年で300万円。「10倍株の見つけ方」「億り人の投資術」みたいなセミナーと情報商材に合計80万円以上(ほぼ無駄だった)。「絶対上がる」という謎の確信でレバレッジETFに突っ込んで1ヶ月で半分。フルコースだ。
極めつけは、妻から「投資は趣味と割り切れないなら辞めてくれ」と通告されたことだ。あのときリビングの時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえたのを覚えている。
そこから2年かけて、家計の見直しと積立投資の基礎を学び直して、たどり着いた結論がこれだ。
- コア=つみたて投資枠での低コストインデックス積立。何があっても動かさない。ここが資産形成の本体だ
- サテライト=成長投資枠での個別株。なくなっても生活が壊れない金額に限定する
都築電気に限った話じゃない。個別株はサテライトに置くものだ。どんなに良い会社でも、1社は1社。その1社に起こることが、全部そのまま自分に降ってくる。分散されていないというのは、そういうことだ。
勝ち方を学ぶ前に、負け方を学べ。これは俺が300万円払って買った教訓だ。あなたはタダでいい。
買う前に決めておくべき3つのこと
単元100株で約39万円(執筆時点)。記事の冒頭でも問いかけたが、もう一度自問してほしい。この金額がゼロになっても、生活と睡眠が壊れないか。「たぶん大丈夫」じゃなく「確実に大丈夫」でなければ、買わないのが正しい判断だ。証券会社によっては単元未満株(1株から)で買える。まずは1株、という入り方もある。
「配当利回りが高いから」は、理由として弱い。利回りは株価が動けば変わるからだ。書くならこう書く。
「10年で営業利益率を4倍にした実行力を評価し、2029年3月期の営業利益120億円の達成に賭ける」
——このように検証可能な形で言語化する。検証できない理由は、あとで自分を助けてくれない。
買ってから考えると、必ず感情が判断を乗っ取る。買う前に撤退条件を決めて、紙かメモアプリに書いておく。例:「エンジニアリングサービス売上が2期連続で計画未達なら見直す」「配当方針が下方に変更されたら撤退」。
STEP3の重みだけ、もう少し話させてくれ。
リーマンショックのあと、俺は保有株を投げ売りした。撤退条件なんて決めていなかった。ただ怖かった。深夜のリビングで、ノートPCの画面だけが青白く光っていて、売却ボタンにカーソルを合わせた指先が、氷みたいに冷たかった。
クリックした。損失が確定した。そして——その後の回復相場に、俺は一度も乗れなかった。
撤退条件を決めていない人間は、必ず一番売っちゃいけないタイミングで売る。これは性格の問題じゃない。人間の脳の仕様だ。仕様に逆らうんじゃなく、仕様を前提にルールを作れ。
四半期ごとに確認すべき「3つの数字」
ここが、この記事があなたに渡す最も実用的な武器だ。
株価を毎日見る必要はない。というより見ないほうがいい。見るのは四半期決算のタイミングだけ。そのときに、この3つだけを確認する。
| # | 見るべき数字 | 判断基準 |
| ① | エンジニアリングサービス売上の進捗 | 2029年3月期406億円(CAGR9.3%)のペースに乗っているか。2027年3月期の通過点は323億円。ここが伸びないなら「サービス企業への転換」というストーリーが崩れる |
| ② | ストック型売上高の推移 | 2027年3月期410億円 → 2028年3月期436億円 → 2029年3月期463億円の計画に対する進捗。ここが崩れると業績の底が抜ける |
| ③ | 配当方針の変更有無 | 配当性向60%・下限DOE6.0%が維持されているか。方針変更は投資前提そのものの崩壊なので、最優先で確認する |
余力があれば、補助的にこのあたりも見ておくといい。
- 営業利益率(2029年3月期10.0%への進捗)
- 従業員数と1人あたり売上高(生産性+20%の進捗=弱み①の答え合わせ)
- 戦略投資の実行有無(M&Aの発表があったら、内容と金額を必ず読む)
逆に、見なくていいものも言っておく。日々の株価。SNSで流れてくる噂。根拠が書かれていない目標株価。この3つは、あなたの判断を良くする材料には一切ならない。
株価は結果だ。原因を見ろ。そして原因は、さっきの3つの数字の中にある。
買っていい人・買わない方がいい人
最後に、自分がどっちに当てはまるか確認してほしい。
| ◎ 検討していい人 | ✕ やめておいた方がいい人 |
| つみたて投資枠のコアが既に固まっている | 生活防衛資金も積立も、まだ整っていない |
| 39万円が消えても生活と睡眠に影響がない | その39万円が生活費・教育費の一部である |
| 四半期決算を年4回チェックする気がある | 買ったら放置して、株価だけ見るつもり |
| 中期経営計画の数字を自分で確認できる | 「誰かが良いと言っていた」が主な理由 |
| 減配・株価下落の可能性を受け入れられる | 「高配当=安全」だと思っている |
| ポートフォリオの一部(サテライト)として持つ | 1銘柄に資金を集中させるつもり |
ようこ結局、買った方がいいんですか? 買わない方がいいんですか?
ちょくそれを俺が決めたら、お前は次も他人に聞くことになる。数字は全部出した。決めるのはお前だ。それが一番、資産が減らないやり方だよ
都築電気に関するよくある質問
- 都築電気は富士通の子会社ですか?
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子会社ではありません。富士通は持株比率12.80%の第2位株主です(2026年3月31日現在)。筆頭株主は株式会社麻生で23.97%。ただし1932年の創業時から続く富士通との取引関係は、現在も事業基盤のひとつになっています。
- 都築電気の株は新NISAで買えますか?
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東証プライム上場の現物株なので、成長投資枠の対象です(証券会社により取扱いは異なるため要確認)。つみたて投資枠では買えません。なお個別株である以上、元本割れのリスクがあります。
- 最低いくらから買えますか?
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単元株数は100株。執筆時点の株価3,895円なら約39万円+手数料です。証券会社によっては単元未満株(ミニ株)で1株から購入できる場合もあります。
- 配当利回りが高いのはなぜですか?
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株価が下がったからではなく、2027年3月期から配当性向を40%→60%、下限DOEを3.5%→6.0%に引き上げたからです。予想配当190円は「予想EPS315.7円 × 60%」からの逆算値です。ただし利益が減れば配当も減る設計である点は理解しておく必要があります。
- 過去に減配したことはありますか?
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あります。2021年3月期に55円→46円へ減配しています。同期は営業利益率も4.2%→3.0%に低下した年でした。「連続増配だから絶対に減配しない」というタイプの銘柄ではない、と理解しておくべきです。
- 業績はこれからも伸びますか?
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会社は2029年3月期に売上1,200億円・営業利益120億円を目標としています。前中期経営計画を全項目超過達成した実績はありますが、Windows 10更新特需の反動、従業員数がほぼ増えない計画などの懸念材料もあります。断定はできません。
- AIで仕事が減るリスクはありませんか?
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会社自身が中期経営計画で「AIによる自動化が進展し、単純な開発・構築の価値は相対的に低下」と明記しています。その上で”AI Native”への移行を戦略の柱に据えています。リスクを認識して手を打っている点は評価できますが、成否は未確定です。
- 決算はいつ発表されますか?
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3月期決算のため、本決算は例年5月中旬、四半期決算は8月・11月・2月頃の発表です。正確な日程は必ず公式IRサイトで確認してください。
まとめ:都築電気は「よく分からない会社」から「説明できる会社」になったか
記事の冒頭で、7つの問いを約束した。答え合わせをしよう。
| 問い | 答え |
| どんな会社? | 1932年創業、ICTの設計・構築・運用保守。売上1,037億円。ただし約7割はまだ機器販売 |
| 富士通との関係は? | 子会社ではない。富士通は12.80%の第2位株主。筆頭は麻生23.97% |
| 強みは? | 10年で営業利益率2.0%→7.9%、前中計全項目超過達成、SI×NIの両刀、2万社の顧客基盤、ストック型売上4割、自己資本比率55.1% |
| 弱みは? | 人がほぼ増えない増収計画、モノ売り7割、Windows 10特需の反動(2027年3月期の純利益は▲11.2%予想)、戦略投資400億円の未実行、配当性向60%の利益連動 |
| 株価は? | 執筆時点3,895円、予想PER12.34倍、PBR1.47倍、予想利回り4.88%。PBRは0.8倍から1.3倍へ改善済み |
| 今後は? | 2029年3月期に売上1,200億・営業利益120億・ROE14.5%以上。長期ビジョンは利益目標を上方修正(2033年3月期 営業利益180億) |
| どう向き合う? | コアは崩さずサテライトで。四半期ごとに3つの数字を確認。撤退条件は買う前に決める |
さて、記事の最初に置いた問いを覚えているか。
「39万円。あなたの手取り月給の、何割にあたる金額だ?」
あのとき、あなたはこの会社の名前しか知らなかった。今は違う。誰が株主で、どこで稼いでいて、何が強くて、何が危なくて、3年後に何を目指しているか——全部知っている。
同じ39万円でも、その2つはまったく別の39万円だ。
この記事を読んで「買う」と決めたなら、それはあなたの判断だ。ちゃんと材料を見て決めたなら、下がっても理由が説明できる。説明できるなら、次に活かせる。
そして——「調べた結果、自分には合わないから買わない」と決めたなら、それも同じくらい立派な判断だ。いや、正直に言えば、そっちのほうがよほど上級者の判断だと俺は思っている。
一番まずいのは、よく分からないまま雰囲気で買って、下がってから慌てて理由を探すことだ。それが、俺が300万円払って学んだことだから。
あの朝、満員電車の窓ガラスに肩を押しつけられながら、俺は自分に問いかけた。「なんでこの会社を買ったんだっけ?」——答えが、出てこなかった。あの沈黙が、15年経った今でも一番きつい記憶として残っている。
あなたには、あの沈黙を味わってほしくない。だからこの記事を、こんなに長く書いた。
相場は逃げない。逃げるのはいつも自分のメンタルだ。焦らなくていい。都築電気は明日も明後日も上場している。納得してから決めればいい。
俺の屍を越えてくれ。
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
- 記載の数値・株価・指標は2026年7月20日執筆時点で公開情報から確認できたものです。市況や会社の業績により変動します。
- 会社予想・目標値はあくまで会社が公表した計画であり、達成を保証するものではありません。
- 株式投資には元本割れのリスクがあります。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
- 最新かつ正確な情報は、都築電気 公式IRサイトおよび各証券会社の提供情報でご確認ください。

