暴落の朝、証券口座を開くのが怖くて、スマホを裏返してコーヒーを二杯飲んだ経験、ないか?
俺はある。何度もある。含み損の赤い数字を見た瞬間、頭の中がぐるぐる回って、その日は一日仕事が手につかなかった。売るべきか、耐えるべきか。迷っているうちに株価はさらに落ちて、結局いちばん安いところで投げ売りした。あの「売却」ボタンを押した指先の冷たさは、今でも忘れられない。
投資歴15年。最初の5年で300万を溶かし、「10倍株の見つけ方」みたいな情報商材に80万をつぎ込み、家族から「投資は辞めてくれ」と通告された男だ。孫子の兵法も一通り読んだ。「彼を知り己を知れば〜」ってやつな。でも、勝てなかった。
そんな俺を、どん底から引き上げてくれた古典がある。孫子じゃない。もう一人の兵法家――呉子(ごし)だ。
正直に言う。呉子を読んで、俺は「もっと早く出会いたかった」と本気で思った。なぜなら呉子は、「どう勝つか」ではなく「どうすれば負けないか・退場しないか」を徹底的に教えてくれる兵法書だからだ。派手に勝ちたい人には響かない。でも、一度でも大きく負けたことがあるお前には、たぶん刺さる。
この記事では、株式投資に効く呉子の名言をおすすめ順(投資への効き目順)にランキング形式で紹介する。原文・出典もちゃんと載せる。そして一つひとつ、俺の恥ずかしい失敗談とセットで「じゃあ投資でどう使うのか」まで落とし込む。読み終わる頃には、暴落が来ても前より少しだけ冷静な自分になれてるはずだ。
先に断っておく。呉子を読んだからって「絶対に儲かる」わけじゃない。投資に元本割れのリスクは必ずある。呉子が教えてくれるのは必勝法じゃなく、「負けにくくして、相場に生き残り続ける」ための思想だ。それでいいなら、続きを読んでくれ。
結論:呉子の名言は「勝ち方」じゃなく「負けない生き方」を教えてくれる

まず結論から言う。呉子の名言が株式投資に効くのは、それが「守り」と「規律」と「和」の兵法だからだ。
呉子ってのは、紀元前の中国・戦国時代に活躍した呉起(ごき)という軍略家が残したとされる兵法書だ。孫子と並んで「武経七書」という兵法のバイブル集に選ばれている、正真正銘の一級品。現存するのは六篇(図国・料敵・治兵・論将・応変・励士)だけだが、その中身が渋い。
孫子と呉子、どう違うのか。ざっくり言うとこうだ。
- 孫子=いかにして「勝つ」か。智略・戦術・情報戦の書
- 呉子=いかにして国を「治め」、味方を「和」させ、「負けない」か。組織と規律と覚悟の書
ここで考えてみてほしい。個人投資家が相場から消えていく理由って、なんだと思う?「勝てないから」じゃない。
「負け方を知らずに退場するから」だ。暴落で狼狽売り、含み益で調子に乗って集中投資、生活費まで突っ込んで身動きが取れなくなる。全部「負け方の下手さ」で退場していく。俺がそうだった。
だからこそ、勝ち方を説く孫子より、負けない生き方を説く呉子が効くんだ。「勝ち方を学ぶ前に、負け方を学べ」――これは俺の口癖でもある。
ボッチ呉子って、要するに孫子のパクリでしょ?二番煎じじゃん。
ちょく逆だ。孫子が「勝つための頭脳」なら、呉子は「負けないための足腰」。投資で最後に生き残るのは、頭がいいやつより、足腰が強いやつだ。お前みたいに勝つことしか考えてないやつほど、真っ先に退場する。覚えとけ。
【おすすめ】投資に効く呉子の名言ランキング早見表

「講釈はいいから、どの名言が投資に効くのか先に教えろ」というせっかちなお前のために、まず早見表を置いておく。これから一つずつ、俺の失敗談とセットで深掘りしていくランキングだ。
| 順位 | 名言(書き下し) | 出典 | 投資での一言メッセージ |
| 第1位 | 兵を用うるの害は、猶予、最大なり | 治兵篇 | 最大の敵は暴落ではなく「迷い」 |
| 第2位 | 五たび勝つ者は禍あり | 図国篇 | 勝ちすぎ・過信こそ破滅の入口 |
| 第3位 | 治を以て勝と為す | 治兵篇 | 勝敗を決めるのは資金量でなく規律 |
| 第4位 | 国に和せざれば、以て軍を出すべからず | 図国篇 | 土台(生活・家庭・メンタル)を先に整えよ |
| 第5位 | 死を必すれば則ち生き、生を幸えば則ち死す | 治兵篇 | 覚悟なき中途半端が一番危ない |
| 番外 | 吮疽(せんそ)の仁 | 史記・呉起伝 | コツコツ積み上げた信頼と継続が実を結ぶ |
どうだ、どれも「攻めろ!」じゃなく「守れ、備えろ、迷うな」って方向だろ?これが呉子だ。
ちょくここから一つずつ、俺がどう痛い目を見て、この言葉に救われたかを話していく。
第1位「用兵之害、猶予最大」――投資最大の敵は暴落じゃない、お前の“迷い”だ

投資でいちばん金を失う原因は、暴落そのものじゃない。暴落したときに「迷う」ことだ。呉子はそれを2400年前に言い切っている。
【原文】用兵之害、猶予最大。三軍之災、生於狐疑。
【書き下し】兵を用うるの害は、猶予(ゆうよ)、最大なり。三軍の災いは、狐疑(こぎ)より生ず。
【意味】軍を動かすとき最大の害となるのは、ぐずぐずと決断できない「ためらい」である。全軍を破滅させる災いは、疑い迷う心から生まれる。――『呉子』治兵篇より
なぜこれが投資最大の教訓なのか。理由はシンプルだ。相場では、下落そのものより「下落したときに人間の心が固まって動けなくなること」のほうが、はるかに大きな損失を生むからだ。上げるか下げるか、売るか持つか――迷っている時間そのものが、じわじわとお前の資産を削っていく。
俺の話をしよう。もう15年近く前、リーマンショックのときだ。当時の俺は個別株にそこそこ突っ込んでいた。株価が崩れ始めたとき、頭では「長期で持てば戻る」と分かっていた。でも、下がり続けるチャートを見ているうちに、その「分かっている」が溶けていった。
深夜のリビング。シーンとした部屋で、スマホの株価アプリだけが青く光っていた。売るべきか。もう少し待つべきか。売ったら負けを認めることになる。でも、もっと下がったら――。その「でも」を何十回も繰り返しているうちに、指がひとりでに動いていた。気づいたら、ほぼ底値で全部投げていた。翌年からの回復相場?もちろん、一円も乗れなかった。売った現金を握りしめて、上がっていくチャートを眺めるだけの日々だ。あれは効いたな。
あの狼狽売りの正体こそ、呉子の言う「猶予」と「狐疑」だった。暴落に殺されたんじゃない。自分の「迷い」に殺されたんだ。
ようこでも、暴落してるのに迷うなって言われても難しくないですか?どうすれば迷わずにいられるんですか?
ちょくいい質問だ。答えは「暴落してから考えない」だ。暴落の渦中で正しい判断なんて誰にもできない。だから平時にルールを決めておく。『暴落しても積立は止めない』『狼狽売りは禁止』ってな。迷う余地を先に消しておくんだよ。
だから結論はこうだ。投資で戦う相手は、日経平均でもNYダウでもない。自分の中の「猶予(迷い)」だ。これを消す一番の方法は、感情が動く前に――つまり平時のうちに――行動ルールを決めて自動化しておくこと。
積立設定を自動にして、暴落時は口座を開かない。判断する場面そのものを減らせば、迷いようがない。呉子はそれを「猶予こそ最大の害」という一言で射抜いている。
第2位「五たび勝つ者は禍あり」――勝ちすぎたやつから退場していく

投資で本当に怖いのは、負けた直後じゃない。勝った直後だ。連勝しているとき、含み益がふくらんでいるとき、人間はいちばん危険な生き物になる。呉子はこれもズバリ言っている。
【原文】天下戦国、五勝者禍、四勝者弊、三勝者覇、二勝者王、一勝者帝。是以数勝得天下者稀、以亡者衆。
【書き下し】天下の戦国、五たび勝つ者は禍あり、四たび勝つ者は弊(つか)れ、三たび勝つ者は覇たり、二たび勝つ者は王たり、一たび勝つ者は帝たり。是を以て、しばしば勝ちて天下を得る者は稀に、以て亡ぶ者は衆(おお)し。
【意味】戦って五回勝つような国は災いを招き、四回勝てば疲弊する。勝ちを重ねすぎる者ほど、かえって身を滅ぼす。だから、勝ちを重ねて天下を取った者は稀で、それによって滅んだ者のほうが多い。――『呉子』図国篇より
ゾクッとしないか。「勝てば勝つほど身を滅ぼす」だぞ。なぜか。勝ちが続くと、人は「自分の実力だ」と勘違いする。運を実力と取り違えた瞬間、リスク管理が吹き飛ぶ。これは戦争でも投資でもまったく同じ構造だ。
俺の恥をもう一つさらそう。投資を始めて最初の3ヶ月、ビギナーズラックで40万の含み益が出た。そのとき何を思ったか。「俺、投資のセンスあるんじゃね?」だ。今思うと完全に情弱の顔をしていた(笑)。
そこからが地獄の入口だった。「センスがある」と思い込んだ俺は、根拠もないのに一つの銘柄に資金を集中させ、さらに信用取引にまで手を出した。勝ちが続いていたから、怖さが完全に麻痺していたんだな。結果は――半年で300万が消えた。給料が補填に消えていく毎日。あのとき40万勝っていなければ、俺はここまで大きくは負けなかったはずだ。皮肉なことに、俺を破滅させたのは「負け」じゃなく「勝ち」だった。
ボッチえ、でも勝ってる時こそ攻めて一気に増やすべきでしょ!波に乗ってるんだから全力じゃん!
ちょくそれが「五勝者禍」で滅ぶやつの典型的なセリフだ。波に乗ってると思った瞬間が、たいてい天井なんだよ。勝ってる時ほど、利益の何割が『運』だったかを疑え。調子に乗った俺の屍を、越えてくれ。
じゃあ具体的にどうするか。勝っているときこそ、ルールを厳守する。ポジションを増やさない。利益が出たら「これは運だったかもしれない」と一度疑う。連勝しているときほど、記録をつけて自分の判断を客観視する。
呉子の「五勝者禍」は、投資における最強のブレーキだ。アクセルの踏み方を教える本はいくらでもあるが、ブレーキの大切さを教えてくれる古典はそう多くない。
第3位「治を以て勝と為す」――勝敗を決めるのは資金量でも銘柄数でもなく“規律”だ

「もっと元手があれば」「もっといい銘柄を知っていれば」――そう思ったことはないか?俺は何百回も思った。でも呉子は、そのどれも本質じゃないと言い切る。
【原文】武侯問曰、兵何以為勝。起対曰、以治為勝。
【書き下し】武侯(ぶこう)問いて曰く、「兵は何を以て勝つと為すか」。起(き)対(こた)えて曰く、「治を以て勝と為す」。
【意味】魏の武侯が「戦は何によって勝つのか」と問うと、呉起は「治(=統制・規律)によって勝つのです」と答えた。兵の数の多さではなく、統率と規律こそが勝敗を決める。――『呉子』治兵篇より
「治を以て勝と為す」。これを投資に翻訳するとこうなる。勝敗を分けるのは、資金の大小でも、銘柄の多さでも、情報の量でもない。「自分で決めたルールを守れるかどうか(治)」だ。
俺は昔、これと真逆をやっていた。「治」つまり規律がゼロのまま、「数」と「情報」ばかりを追いかけていたんだ。「10倍株の見つけ方」「億り人の投資術」みたいなセミナーや情報商材に、合計80万以上つぎ込んだ。必勝法という名の「情報の量」を買い漁れば勝てると信じていた。
結果はどうだったか。ほぼ全部、無駄だった。理由は簡単だ。どんなにいい情報を仕入れても、それを使う俺自身に「治」がなかったからだ。ルールがないから、感情で買って感情で売る。せっかくの情報も、規律のないやつが使えば宝の持ち腐れどころか、凶器になる。呉起が「兵の数ではなく治だ」と言った意味が、80万を失ってようやく骨身に沁みた。
ちょくじゃあ「治(規律)」を投資でどう作るか。難しく考えなくていい。自分ルールを紙に書き出す。これだけだ。例えばこんな感じ。
- 毎月〇日に、決めた額を自動で積み立てる(相場は見ない)
- 個別株を買うときは「買う理由」を一行書けないなら買わない
- 一銘柄への投資は資産全体の〇%まで
- 暴落しても、コアの積立には手をつけない
- SNSで話題という理由だけでは買わない
たったこれだけの「治」があるかないかで、10年後の口座残高はまるで変わる。俺はこの一枚を作るのに、300万+80万の授業料を払った。お前はタダで持って帰ってくれていい。
第4位「国に和せざれば、以て軍を出すべからず」――土台が乱れた状態で投資に出るな

これは呉子の中でも、いちばん有名で、いちばん深い教えだ。呉子は本の冒頭(図国篇)で、いきなりこう突きつけてくる。
【原文】不和於国、不可以出軍。不和於軍、不可以出陣。不和於陣、不可以進戦。不和於戦、不可以決勝。
【書き下し】国に和せざれば、以て軍を出すべからず。軍に和せざれば、以て陣を出すべからず。陣に和せざれば、以て進み戦うべからず。戦いに和せざれば、以て勝を決すべからず。
【意味】国内がまとまっていなければ軍を動かしてはならない。軍がまとまっていなければ陣を敷いてはならない。陣がまとまっていなければ進んで戦ってはならない。戦いの中で心が一つでなければ、勝利を決することはできない。――『呉子』図国篇より
呉子は「まず勝ち方を考えろ」とは言わない。「戦う前に、まず内側(土台)の和を整えろ」と言う。ここが孫子とも違う、呉子の真骨頂だ。
投資に置き換えるとこうだ。あなたにとっての「国の和」とは何か。家計、生活防衛資金、家庭、そして自分のメンタルだ。この土台が乱れたまま投資に突っ込むと、必ず崩れる。断言する。
これも身に覚えがありすぎる。300万を溶かしていた頃の俺は、まさに「和せざる国」だった。損失の補填で毎月の給料が消え、生活防衛資金なんて概念もなかった。当然、家庭もギスギスする。ある夜、家族に静かに言われた。「投資は趣味と割り切れないなら、辞めてくれ」と。あのときのリビングの空気の重さは、今でも思い出すと胸が締めつけられる。土台がガタガタなのに、俺は必死で「戦(いくさ)=相場」の勝ち方ばかり探していた。順番が完全に逆だったんだ。
ようこ耳が痛いです…。じゃあ投資を始める前に、まず何から整えればいいんですか?
ちょく順番はこうだ。①まず生活費の半年分を「生活防衛資金」として現金で確保する。②家族がいるなら投資方針をちゃんと話して合意を取る。③その上で、無くなっても生活が揺るがない「余裕資金」だけで始める。この『和』ができてない状態で相場に出るのは、飢えた兵を戦場に送るのと同じだ。
結論。投資の勝敗は、実は相場に出る前にほとんど決まっている。生活防衛資金という「和」があれば、暴落が来ても現金化を迫られない=狼狽売りをしなくて済む。家庭の「和」があれば、含み損でも精神的に追い詰められない。呉子の「まず和を整えよ」は、テクニック以前の、最強のリスク管理なんだ。
第5位「死を必すれば則ち生き、生を幸えば則ち死す」――覚悟なき中途半端が一番危ない

最後の名言は、少し骨太だ。だが、投資で長く生き残るための核心を突いている。
【原文】凡兵戦之場、立屍之地。必死則生、幸生則死。
【書き下し】凡そ兵戦の場は、屍(かばね)を立つるの地なり。死を必すれば則ち生き、生を幸(こいねが)えば則ち死す。
【意味】そもそも戦場とは、屍が積み上がる死地である。死ぬ覚悟を決めて臨む者はかえって生き残り、生き延びたいと逃げ腰になる者はかえって死ぬ。――『呉子』治兵篇より
物騒に聞こえるが、投資に置き換えると実に的確だ。ここで言う「死を必す(覚悟を決める)」とは、投資方針を腹の底から一つに決めること。「生を幸う(逃げ腰)」とは、覚悟が定まらず、ふらふらと短期の値動きに右往左往することだ。
覚悟を決めて「俺は長期でインデックスを積み立てる」と腹をくくった投資家は、暴落が来ても耐えて生き残る。逆に、覚悟がなく「上がりそうな株にちょっと乗って、ヤバそうなら逃げよう」という逃げ腰の人ほど、暴落のたびに狼狽して退場していく。まさに「死を必すれば則ち生き、生を幸えば則ち死す」だ。
俺の迷走時代がまさに「生を幸う」の見本だった。IPOで一発、新興株で一発、と一発逆転ばかり狙って、どの方針にも腹をくくれていなかった。3年間、ほぼトータルマイナス。転機は、腹を決めた瞬間に訪れた。「もう派手に勝とうとするのはやめる。インデックスの長期積立でコツコツいく」と覚悟を決めた。その瞬間から、不思議と相場に振り回されなくなった。皮肉なもんで、「勝とう」とするのをやめて「生き残ろう」と覚悟を決めたら、資産が増え始めたんだ。
ちょくちなみに呉子を書いた呉起という人物、逸話がまた渋い。もっと知りたいやつのために、少しだけ紹介しておく。
【豆知識】呉起の「吮疽(せんそ)の仁」――信頼はコツコツ積み上げるもの
呉起は将軍でありながら、兵士と同じ物を食べ、同じ場所で寝た。ある兵士の傷が化膿したとき、呉起はその膿を自分の口で吸い出してやったという(「吮疽の仁」)。ところがその兵士の母親は、話を聞いて泣いた。「昔、夫も呉起さまに膿を吸っていただき、その恩に報いようと死ぬまで戦って命を落としました。今度は息子も、きっと同じように……」と。(出典:『史記』孫子呉起列伝)
この逸話が教えてくれるのは、信頼も成果も、一発では生まれないということだ。呉起は日々の小さな積み重ねで兵の心を掴んだ。投資も同じで、資産は一発の大勝ちではなく、コツコツ積み上げた継続の先にしか実らない。地味だが、これが真理だ。
結論。投資でいちばん危ないのは、大きく負けることじゃない。方針が定まらない「中途半端」な状態だ。まず「自分はどの戦い方で生き残るのか」を腹の底から決めろ。覚悟が定まれば、日々の値動きは怖くなくなる。呉子はそれを「死を必すれば則ち生き」と教えている。
孫子と呉子、投資に効くのはどっち?――「勝つ人」より「生き残る人」になれ

ここまで読んで、「で、結局、孫子と呉子どっちを読めばいいの?」と思ったお前へ。俺の答えははっきりしている。今のあなたには、呉子だ。
誤解しないでほしい。孫子が悪いわけじゃない。孫子は名著だ。ただ、孫子は「いかに勝つか」に寄っている。そして――ここが大事なんだが――個人投資家が相場から消える理由は「勝てないから」じゃなく「生き残れないから」なんだ。両者の違いを表にまとめておく。
| 孫子 | 呉子 | |
| キーワード | 勝つ・智略・情報戦 | 負けない・治・和・覚悟 |
| 投資での効き方 | 勝ち方・戦術のヒント | 退場しないメンタルと規律 |
| 刺さる人 | 勝ちを取りにいく攻めの人 | 一度負けた人・守りを固めたい人 |
| ひとことで | 攻めの教科書 | 生き残りの教科書 |
投資の世界では、派手に勝つ人より、静かに生き残った人が最後に笑う。なぜなら、相場に長く居続けた人だけが、複利という時間の魔法を味方にできるからだ。呉子は、その「生き残り方」を教えてくれる。
ちょくいいか、投資で最後に勝つコツはたった一つ。「相場から退場しないこと」だ。派手さはいらない。生き残ったやつが、全部持っていく。

呉子に学ぶ「退場しない投資」4つの実践原則【和・治・断・戒】

名言を知って「いい話だったな」で終わらせたら、それこそ呉子に叱られる。ここまでの教えを、覚えやすい4つの原則にまとめておく。頭文字で「和・治・断・戒(わ・ち・だん・かい)」と覚えてくれ。
- 和…生活防衛資金・家庭・メンタルの土台を先に整える(→ 国に和せざれば軍を出すべからず)
- 治…自分ルール(買う・売る・上限・積立)を先に決める(→ 治を以て勝と為す)
- 断…迷い(猶予)を断つ。自動化し、狼狽売りを禁じる(→ 用兵之害、猶予最大)
- 戒…勝ちすぎ・過信を戒める。過剰トレードをやめ長期積立に軸を置く(→ 五勝者禍)
この4原則を、今日からの行動に落とすとこうなる。順番が大事だから、上から順にやってくれ。
投資より先に、生活費の半年分を現金で確保する。これが暴落時に狼狽売りしないための「和」の土台になる。家族がいるなら投資方針も共有しておく。
積立額・積立日・一銘柄の上限・買う理由の言語化・暴落時の対応を紙に書き出す。この「治」があるかないかで、10年後が変わる。
新NISAのつみたて投資枠などを使い、毎月の積立を自動設定にする。相場を見て売買を判断する場面そのものを減らせば、「猶予(迷い)」が入り込む隙がなくなる。
含み益が出ても「これは運かもしれない」と一度疑う。ルールを超えたポジション追加や過剰トレードはしない。長期・積立・分散を軸に据え、勝ちすぎの禍を避ける。
この4ステップは、そのまま新NISA時代の王道――「長期・積立・分散」――と重なる。呉子の2400年前の教えが、令和の非課税制度とピタリ噛み合うのは、正直ちょっと感動すらする。ただし念のためもう一度言う。積立でも元本割れのリスクはゼロにはならない。
呉子の教えは「損を絶対ゼロにする魔法」じゃなく、「大崩れして退場する確率を下げる守り」だと理解してくれ。
ようこつまり…派手に勝とうとしなくていいんですね。生き残ることを最優先にすればいいんだ。
ちょくそういうことだ。ようこ、お前は筋がいい。相場は逃げない。逃げるのはいつも自分のメンタルだ。和・治・断・戒でメンタルを固めれば、お前はもう簡単には退場しない。
新NISAにおすすめネット証券3社

2024年1月に始まった新NISAの口座開設が加速しています。
金融庁が2026年7月3日に公表した調査によると、2025年12月末時点のNISA口座数は2,821万口座、累計買付額は71兆円に達しました。
ボッチ日本証券業協会の調査を見ると、2026年1~5月だけでも164万口座が新たに開設されているよ。

引用|日本証券業協会|「NISA口座の開設・利用状況調査結果(証券会社10社・2026年5月末時点)」の公表について
ようこ今回紹介するSBI証券・マネックス証券・楽天証券は、いずれも口座開設料と口座維持費が無料です。
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呉子と株式投資に関するよくある質問(FAQ)
- 呉子と孫子は何が違うの?
-
ざっくり言うと、孫子は「いかに勝つか」の智略の書、呉子は「いかに負けず、組織を治め、和を保つか」の守りと規律の書だ。どちらも武経七書に選ばれた名著だが、一度大きく負けた個人投資家のメンタルを立て直すには、退場しない生き方を説く呉子のほうが刺さりやすい。
- 呉子の名言は投資初心者でも使えますか?
-
むしろ初心者ほど効く。呉子の教えは難しいテクニックではなく、「土台を整えろ(和)」「ルールを決めろ(治)」「迷うな(断)」「勝ちすぎるな(戒)」という、初心者が最初につまずくポイントそのものだからだ。難しい銘柄分析より先に、この4原則を身につけたほうが退場しにくくなる。
- 呉子を読むなら、どこから読めばいい?
-
現存する呉子は「図国・料敵・治兵・論将・応変・励士」の六篇だけで、量も多くない。投資に活かすなら、まず冒頭の「図国篇」(和の思想・五勝者禍)と「治兵篇」(猶予・治・覚悟)を押さえれば十分だ。原文が難しければ、現代語訳つきの文庫本から入るのがおすすめ。まずは本記事で紹介した名言を座右の銘にするだけでも、十分に価値がある。
- 名言を覚えるだけで投資に勝てますか?
-
正直に言う。名言を覚えるだけで勝てるほど相場は甘くない。呉子が与えてくれるのは「必勝法」ではなく「退場しにくくなる思想」だ。ただ、感情で狼狽売りしたり、勝ちすぎて過信したりして退場していく人が大多数の世界で、「退場しにくくなる」ことの価値は計り知れない。生き残った者だけが、複利の恩恵を受けられるからだ。
まとめ:呉子を座右に、相場から退場しない投資家になれ

最後にもう一度だけ、呉子から学ぶ「退場しない投資」の4原則を刻んでおく。
- 和:生活防衛資金と家庭とメンタル、土台を先に整える
- 治:自分ルールを紙に書き、規律で戦う
- 断:積立を自動化し、迷い(猶予)を断つ
- 戒:勝ちすぎ・過信を戒め、長期積立に軸を置く
呉子は「派手に勝つ方法」なんて一言も教えてくれない。教えてくれるのは、「どうすれば負けずに、相場に生き残り続けられるか」――ただそれだけだ。でも、その「だけ」こそが、俺のように300万溶かして、80万を情報商材に払って、狼狽売りで底値を掴んだ人間が、いちばん喉から手が出るほど欲しかったものだった。
大丈夫。死ぬほど損した俺でも、呉子の教えを軸に据え直して、ここまで立ち直れた。派手じゃなくていい。ゆっくりでいい。生き残り続けさえすれば、時間と複利が必ずお前の味方になる。
ちょく2400年前の兵法家が命懸けで残した言葉を、令和の相場で活かせるやつはそう多くない。だからこそ、お前には呉子を座右の書にして、相場から退場しない投資家になってほしい。俺の屍を越えて、その先へ行ってくれ。
※本記事の呉子の名言・原文および呉起の逸話は、『呉子』(武経七書)および『史記』孫子呉起列伝を参考にしている。概要は呉子(Wikipedia)でも確認できる。投資は自己責任で。元本割れのリスクがあることを理解したうえで、無理のない余裕資金で行ってほしい。










